42アンプとスピーカー


前回、マグネチックピックアップの音を、超再生受信機の低周波増幅部と、バラックの鑑たるダンボールスピーカーで聞いて、祝杯をあおったというお話でした。
今回はその次に私が何をしたか、という巻です。

これ、UZ42 という古い真空管の、アンプです。五極管です。仕舞い込んだ荷物の中から、ようやく出しました。
私が20代の時に作ったモノラルアンプです。よくぞ捨てずに持っていましたというシロモノ。今から三十数年前の作です。バラックではありませんが、飾り気のない実験機です。

私は10代後半から20代前半は、オーディオといえばトランジスターだと思っていました。真空管は中学生の頃のジャンク遊びと、振り返りませんでした。時代もそんな雰囲気でした。
ところが、ある日、秋葉原を歩いていて、真空管アンプは実は音が良くて高級オーディオは真空管なのだと知って、なんだそれなら自分の得意分野だと、再度真空管を使い始めたのです。
これは再出発の1号機です。

初段管は 6ZDH3A です。私はこの名前が妙に好きでして、長ったらしい名前は、特別な何かを秘めているような。
整流はダイオードの両波整流です。NFBもかかってます。この辺がまだ初心者です。
3 Wくらいの出力で、特に問題のないアンプです。
このアンプと、実験的に 6GA4 のアンプも作り、ステレオにして、試行的に聴いていました。五極管と三極管の違いとかですね。

上の写真に見えますが、トランスは今はなき TANGO です。OPTは U-608 です。懐かしいでしょう?
回路図はありませんが、ごく普通のシングルアンプです。
普通とは言え、NFB回路に、BASS増幅回路が直列になっているようです。VRとC で帰還させる周波数帯を調整して、見かけ上で低音を上げているようです。実際少しはアップしたように聞こえます。が、今思えば不要の物です。ちょっと便利ですが。

これら2本の真空管はおそらく戦前か、戦後すぐくらいの製造で、私が中学生の時、ジャンクラジオから取った物です。今でも使えるのですから、オドロキです。
この UZ42 というタマは私にとってちょっとした宝でした。普通、ラジオの出力管は 6ZP1 というのが使われていて、42には滅多に出逢いません。42の方が見かけもブリッと太く、出力も上なのです。
一方、P1 は少し小型で、名前の響きも弱々しいですね。ジャンクラジオの裏蓋を開けて P1 が挿さっていると、中学生の私はガッカリしたものです。

さて、バラックの鑑 と自賛しても、ダンボールのスピーカーでは、高級42アンプ が泣くので、すぐに板で作りました。
ま、バラックの板作りですが、音はダンボールより、良くなりました。

板は半端材の寄せ集め。バッフルは集成材、使い回わしたネジ穴が残ってます。今回のために.円を切りぬきました。
ブンマワシというコンパスがないので、こうしました。

画鋲と紙とサインペンです。回し挽きを使う時はこのくらい濃くハッキリした線じゃないとやれません。

ハイ。泣く子も黙るフォステクスの 16cmスピーカーです。スピーカーが上下反対ですが、箱の上部が浅く作ってあるので、配線しやすいだろうと、反対に取り付けただけです。
後面開放型です。これだと低音ボンボンは望めませんが、音が軽々すっきりしています。アルニコ磁石だったらもっといいのですがね。
両わきの板は、パネコートという、合板です。フロア型蓄音機の製作にも使いました。
底板はMDFという、粉を固めたような板です。
これらはサイズがちょうどの半端材を集めたらこうなったというだけです。
本当はバッフルには正目の一枚板を使いたいところです。MDFは本当はスピーカーには使いたくないです。以前、MDFで五角柱のバスレフを渾身の努力で作ったのに、聴いてみると、音が死んでいたのでガッカリしました。

さてさて
このスピーカーと42アンプでマグネチックピックアップの音を聴きました。
ピックアップの音はやはり セロ弾きのゴーシュ 的に鳴ってました。やっと断線を直したピックアップですが、もう一度、今度は針を支えるダンパーを直す必要がありそうです。
ゴムが劣化しているはずですから。
でもそれはまだ先のことになります。

このアンプとスピーカーにCDプレーヤーをつないだら、とても良い音で演奏できました。まろやかで、ツヤツヤした音です。

さて、前回の記事で、蓄音機の電動を試しにと書きましたが、その結果を書きませんでしたので、以下に追加しておきます。

「蓄音機の電動回転化 についてですが、確かに便利です。しかし、満足感に何かが足らなくなります。何でしょう。やはり儀式が必要なのでしょうか。
美味なる料理を前にして、人は舌なめずり という儀式をしますが、ゼンマイを巻くという行為は、それと同じなのかも知れません。」