6ZP1 は 観音立像に似ている


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 真空管 6ZP1モノラルアンプ の記事です。このブログの 2019年9月の記事で、『76単段アンプ』を載せましたが、その後、別の板で、6ZP1 (ロクゼットピーワン) 単段アンプを試みました。
 当時作り終えたとき、思いつきました。6ZP1は見た目が華奢で、なで肩で、なんか美しいな。ああ、観音様みたいだ、と。

 どうです? 上の写真そう見えませんか? 衆生(しゅじょう)の中に立たれる観音様のようですが。

 一方、2019年3月の『42アンプとスピーカー』でも書きましたが、性能も1段上で、私が少年時代憧れた 42 (ヨンニ一) は、肩が張って、ずんぐり、まるで達磨大師だなと思います。ST管のことをダルマ管とは、よく言ったものでござんすねえ。

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 42、6ZP1 (マツダ)、6AV6 (NEC)、単3電池 

 

 2019年、最初にこのアンプを作ったとき、バラックですが、これでも、見た目はこだわりました。10X20cmの小さい板の上のまん中に球を佇立させ、前面のパーツをなるべくシンメトリーに配置しました。

 ただ、音は出るがやはり、単段ではドライブしきれないので (入力にCDプレーヤー)、2020年、初段に6AV6を付けました。はじめは6ZDH3Aを考えましたが、6ZP1と接近しては絵にならない。で、これのMT版、小さい 6AV6 を思いついたのです。戦後の5球スーパーによく使われたラジオ球です。
 私のオーディオ史では思いもつかなかった球です。しかし、u(ミュー)が100で12AX7 と同じです。しかも小さい。ST管やナス管ばかり見てきた目にはなんとも可愛らしく見えました。密集したパーツの中で、ひっそり健気に働いています。

 今回載せる記事は今、2021年3月に、ちょっと手を入れた物です。

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 元々、このアンプは、私の持っている骨董品、1920年代のホーンスピーカーや戦前のマグネチックスピーカーを聴くために作り、OPTは不要なので、付けませんでした。今回、普通のスピーカーでも聴けるようにと、OPT を付けました。板は小さいままなので、パーツが密集することになりました。

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 贅沢にもチョークトランスを使ってるので、こんな狭い板の上に、ヒータートランス、出力トランス、入力トランス、計4つのトランス。

 

 6ZP1 このラジオ用の球、音はどうなのかというと、普通にオーディオ用として使えます。ただし、スピーカーは16cm以上で、能率の良いもので、アルニコマグネットで、できれば後面開放で、しかも低音がよく出る物を選ベばOKです。

 全然普通じゃねえじゃねえか!

 や、ごもっともでござんす。要はこの球、オーディオとしては高域寄りで低音が出にくいようです。しかし、帰環をかけて調整すると、100Hzで 一1dBくらいにはなります。

 他の名球と肩を並べるのは無理でしょうが、私はこの球で最近は毎夕、CD を聴きながら酌んでます。ま、趣味、味わい の世界です。

 

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 基本はラジオの低周波増幅部です。特筆はPG帰環という、昔の電蓄に使われた帰環回路です。抵抗1本でできるので、デメリットがあるようですが、楽です。

 私は元々帰環回路は好みではないのですが、この際仕方ないですね。750Kで、出力電圧比 一5dB、軽いものです。帰環による音のナマリはなさそうで、真空管らしさは出ています。測定や試聴のためにSWでOFF にもできます。

 6ZP1のカソードには直流電圧計が並列で、内部抵抗により、合成値は597オームです。今回、このメーターと1Kに満たないカソード抵抗では、電流の直読は無理だったので、単純にカソードの電圧を監視しています。10V強で正常と判断しています。

 スクリーングリッドに4.7Kが入ってますが、これはプレート電圧とのバランスのために入れてあります。OPT を外して、直流抵抗が1K~4K以上あるホーンSPを付けた時、プレート電圧がスクリーングリッドの電圧より低くなり過ぎるので、あらかじめスクリーングリッドの方を少し低くしてあります。

 グリッドには発振止めに1K、OPTには0.001uが付いてます。

 OPTの配線はピンで、B十とプレートのジャックに挿してあり、 B回路 から切り離せます。OPT不要のマグネチックスピーカーなどはこのジャックに接続します。

 OPT は小さいながらオリエントコアで、東栄トランスの可愛い選手です。インピーダンス12K、電流15mA。まさに6ZP1のためにあるのではと思います。

 電源は倍電圧整流です。私はファーストリカバリダイオードを使ってます。B電源はトランスレスで、アースにAC のホット側が来ることもあるので、入力はサンスイのST-78を使って絶縁しています。

 チョークに60Hなんてすごいの使ってますが、B電圧を下げるためです。このトランスは直流抵抗2.8Kあります。東栄トランスです。3Kの抵抗でも代用可能ですね。

 6AV6は検波のための  二極部がありますが、アンプには不要で、5、6ピンをアースしておきます。(しなくても影響ないようですが、不明です)

 

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 簡易な測定による、1KHz入出力特性です。定格通り、1Wの出力と言えましょう。1Wあたりがクリップポイントのようです。

 感度が良すぎのようです。ただ、私はプリアンプを使わず、CDプレーヤー直接入力なので、PG帰環をかけた状態でちょうどいいくらいです。CDプレーヤーの出力は実測で0.2~0.4Vですから。6AV6のカソードのC を外せば感度は低くなります。

 私は普段、0.1Wも出さず聴いているので、1Wで十分で、私の主要アンプは更に小出力の0.8Wアンプ、71Aシングルモノです。


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 6ZP1裸周波数特性は高域に偏ったカマボコ型です(青線)。この球の世評の、高域はきれい とか 爽やかな音 というのはこのためでしょうか。

 PG帰環でやっとアンプらしくなります。

一2dBを許容すれば、帯域 60~15 KHzと、小さな入力トランス、小さな出力トランスのわりには、立派なもんです。

 スピーカーのインピーダンスが低いのをつなぐと、OPT の1次インピーダンスが低くなり、帯域が低い方へ偏ります。邪道かも知れませんが、あえて不整合を試みるのも手かも知れません。

    PG帰環のデメリットは管の出力インピーダンスが低くなることにあるらしいです。6ZP1には却って好都合かも知れません。

 因みに私は、SABAというドイツの名門メーカーの、1931年製のラジオ用スピーカー(励磁型)で聴いていて、これが、1.8オームと 低過ぎやんけSP  です。OPT の4オームにつなぐと、1次の12K が 7Kオームになってしまいます。でも柔らかく低音も十分に鳴っています。

 因みにこの逆をやると、高域がUP し、高域不足のSP に使えます。邪道ですが。

 

 このブログは電気的な話が主ではありませんで、本題の、バラック の小技紹介 をします。


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 右端に入力トランスの サンスイST-78 が見えます。これの留め方ですが、トランスのコの字の枠のツメを板の横にトラスネジで、絞めています。もう片方のツメは板にキリで穴をあけ、挿しています。

 ボリュームは端子を上にせず下に伏せています。配線は手間がかかりますが、この方がボリューム内にホコリが入りにくく、よろし。


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 老婆心ながら、ST-78はトランジスタ用です。真空管ではこれ以外の使い方は危険で不可。

 MT管のソケットは小さいので、ベークライトのスペーサーで浮かせてあります。ST管のように金属の カラー を使うと配線と接触しやすく危険。因みにカラーは秋葉原のネジ専門店、西川 に売ってます。アルミパイプを切れば自作できます。


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 トラスネジはナベより頭のツバが広く、物を押さえ付けるのに向いてます。ここでもトラスが活躍。

 入力のピンジャックはネジ1本でも板に留まりますが、回転止めにもう1本、トラスで。因みに LR はショートしてモノにしています。

 小さいスライドスイッチは何かと取り付けが面倒です。寝技で、トラスで強引に押えています。


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 ボリュームと同じように、ネオンランプもL金具で取り付けています。L金具は本当に便利ですよね。因みにこのランプ、二三十年前の物で、サトーパーツ製です。私はLEDの光に馴染めなくて、ネオンです。100 Vで使えますし。

 今はもっと細身のネオンランプがあるようです。L金具に付け易いですね。

 ヒューズホルダは 1cm のスペーサーで、板から浮かせて配線しています。ネオンを高くしてその下に付けました。

 

マグネチックSPです。2019/9『76単段アンプ』のと同じ写真。

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ホーンSP。2020/6『電鍵とホーンスピーカー つづき』のと同じ写真。


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長々ありがとうございました。またご覧ください。