245 アンプ 両波倍電圧整流

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 ナス管 245 の単段アンプです。前々回の当記事に12A単段アンプを載せましたが、それをバラして245アンプに作り変えました。去年(2023)4月のことです。

 ただ、今回の記事、245アンプとしては完全ではなく、AC100vの両波倍電圧整流 の実験が主になっています。

 245はST管の45の前身で、ナス管です。私は若いころからST管のアンプは作っていましたが、それより古い ナス管 には憧れているだけでした。形が古風で優雅だと感じていました。ただ、入手も難しく、それに合うトランスもないので、最近まで手をつけずにいました。

 ナス管の音は私の好みで、ST管より、太い音が出るような気がします。

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 この丸い形が、ぼんやりしたロマンです。中を覗くと、昔、ラジオや無線の教科書の真空管の図解に出ていたように、フィラメントと細いハリガネで出来たグリッドが見えます。カソードがないので単純です。上の写真、フィラメントが赤く見えます。これを猫の耳のような、と言った人がおられますが、言い得て妙です。

 


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 さて本題に入ります。始めはこの写真のとおり、12Aアンプで使った細長い板の上に無理やり245アンプ実験機を作りました。トランス類が横にはみ出ています。バラックそのものです。

 このとき、電源も12Aアンプのもので、AC100vの半波倍電圧整流でした。写真のとおり、プレート電圧が226vしかありません。本当は270vは欲しいところです。平滑の抵抗分を極力減らしても大して上がりません。

 そこで思いついたのです。245は35mAも流れるから、半波じゃ供給が足りないのだろうと。そこで両波倍電圧の登上です。

 
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 これが両波倍電圧整流の基本回路です。ネットでよく見かけます。しかし、肝腎のCの値がどの記事をさがしてもみつかりません。

 AC100vを使った実例など全く見つかりませんでした。ー体何u(マイクロ)にしたらいいのか?

 

 で、私はとにかく47uから始めました。

スイッチON。ヒューズ飛びました! 

 で、ヒューズを1Aから2Aに上げると飛びません。しかし、それでもコンデンサーにダメージがあるでしょう。

 次に、上側ダイオードの手前に10Ω を入れました。ヒューズ(1A)飛びません。OK。しかし、出力電圧も上がりません。47uでは力不足で、突入電流防止のRも原因です。

 

 Cを330uにしました。プレート電圧はCを100u増すたび3Vくらい上がります。で、突入電流を試すために、Cを放電してから、Rを5Ωに減らして再試行すると、またヒューズ飛びました。

 

 そうだよなー。コンデンサーに充電されてなきゃ、100vをショートさせてるようなもんだよなー。

 Cは大きい方がいいが、突入防止のR値も上げざるをえない。うーむ。

 で、220u、330u、470u、と試し、ヒューズを20本飛ばしました。

 220uではR3ΩでなんとかOK、470uでRは10Ωならギリギリ飛ばないとわかりました。

 NTCサーミスター という熱で抵抗が下がるというパーツも試行してみましたがここでは役立ちませんでした。相当な熱にならないと抵抗が下らないことと、下った抵抗値の回復に時間かかるのもひとつの難点です。

 

 CとRのシーソー的な実地試験を繰り返し、誇張なしで本当にヒューズ20本飛ばし、コンデンサー1個オシャカにして答えが出ました。

 Cを470u、Rを安全余裕を見込んで30Ωにし、通電数秒後、両ミノムシの短いコードでRをショートさせるという方法。これで245アンプを作りました。

 これでやっとプレート電圧270vを出し、真空管245の音を初めて聴きました。


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 この写真は実験終了後、しばらく常用アンプとして使っていた時のものです。狭い板からパーツがはみ出しているのは変わりませんが、白い、ミノムシクリップがついた短いコードが見えます。電源スイッチONの後、数秒たってから、抵抗(縁色の) の両端をショートさせて、電圧を上げてアンプとして使っていました。Rをショートさせるスイッチを付けるスペースもなかったのです。 

 しかし、電源の入ってるRの両端をショートさせるなんてのはオッカナイ。しばらくやっていましたが、ここに 遅延リレー を使うことにして、土台板から作り直し

ました。

 ところが、昔はB電源用に小さなリレーが売っていたはずですが、今はない。オムロンのでっかいリレーしかない。値段もけっこうする。これなら始めからトランスを使ってれば、、、、えーい、乗り掛かった舟 だと、遅延リレーを買いました。

 スイッチONのあと、10秒で 51Ω をショートさせる設定で使用しています。1年間使っていますが問題は起きていません。


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 アンプの入力トランスはヴィンテージ物のUTCのトランスです。やわらかな音になる感じです。トランスレスなので入力側はアースとは絶縁です。インピーダンス15K:60KのA-16 という物です。

 ヒータートランスは東栄の、1.25 2.5v がある物で、1.25vを中点として使っています。

 力ソード(フィラメント)バイアスRは33mA流すために、1.2Kになってます。定格にするなら、プレートvを330vにして、カソードvを55vにして、35mA流したいところです。Rは1.5Kくらいでしょうか。

 


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 電源部、リレーの開閉回路が2つあるので、その必要があるか不明ですが、突入防止のRも2つにしました。突入に対し十分余裕をもたせて51Ωにしました。

 リレーはダイヤルで遅延秒数(分も可)を調節できます。オムロンの正規品はちょっと高いですが、その動作がカチッと確実で安心できます。リレーのソケットも買いました。リレーはコピー物が安くあるようですがやめた方が良いと思います。

 冒頭の写真でリレーが高くそびえていますが、このリレーの下にチョークトランスがあります。東栄トランスで、直流抵抗が173Ωとできるだけ低い物を選びました。

 写真は12Aアンプとは別の板に作り直したものですが、それでも板が小さく、2 階建てにしました。

 C1、C2は同じ物で揃える。耐圧は入力ACのルート2倍は最低必要。出力電圧は2ルート2倍。この回路、電池の2個直列と同じようなもんだと思ってます。

 これで280v出て、チョークコイルの直流Rを低い物にしても、OPTもあるのでプレートで270V。

 

 
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 球はRCAの RADIOTRON UX245 です。100年くらい前の物かも知れません。

 音が古めかしいかというと、そんなことはありません。他の真空管と同じです。現段階では、音質はまだ定められませんが、12Aのふわっとした浸透力に芯をもたせて太くした感じです。

 このアンプは単段なので、出力は非常に小さいです。私は YL音響のドライバーと大型のホーンで聴いていました。

 

 ナス管に新品はなく、全て中古です。値も高く、入手も難しく、しかも古くてボケているかも知れない、、、貴重で、あやうい球です。

 それをトランスレスで、板の上で、ってどうなのよ、と私も思います。実はナス管の、整流280 電圧増幅227 も手元にあって、いずれはナス管でそろえたアンプを作りたいと思っていますが、いつになるやら。

 

 結論として、両波倍電圧整流は、あまり実際的ではないと思いました。

 直流での電圧は250vくらい、35mAくらいがせいぜいだと思われます。6AR5や42くらいでしょうか。突入電流防止のR(20~30Ω)をつけたままで、電圧が250vくらいで良いならリレーは要りません。

 又、電源のスイッチの他に、B電源のRショートスイッチを加えれば、リレーなしで出来きます。電源を入れたあと、数秒遅らせて、手動でRをショートさせれば良いのです。ただ、次回ONにするときは、必ず、RショートスイッチがOFFであるこが大事です。


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 貴重な球なので、保護しなきゃと、100均で、樹脂製のコの字型の物を見つけてカバーとして付けました。実は、この力バーを見つけたあと、サイズを合わせて板を切りました。なので本体がまた狭くなってしまい、チョークトランスの上にリレーを組むという、2階建てになってしまったのです。

 透明なカバーはバラックに似合うと思います。

 カバーの天井は、球の頭と3cmくらい離れているので、熱はOKです。しかも左右がガラ空きですから。