電鍵とホーンスピーカー つづき


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前回のつづきです。

アマチュア無線の電信級国家試験を受けに行った少年の物語。結果は…... 合格しました。

秋に試験を受けて、合格通知は冬になって届きました。当時は受験者数も増えていたし、試験は選択マークシートなど無く、すべて記述式で、採点にも時間がかかったことでしょう。

 

やっと届いた通知に少年は もとい、私は喜び、すぐ免許申請の手つづきをしますが、免許証が届いたのは翌年、年が明けてからでした。

上の写真がその免許証です。

今の免許証は自動車免許証のようなカードになっていますが、当時の免許証はまるでパスポートのようです。日本国政府 と金文字が光っています。


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中身がこれです。小説の主人公です。

試験の手つづきに使った、まだ秋への衣替え前の写真なので、Yシャツで、中学校の名札が縫いつけてあります。

当時は郵政省が管轄だったので、郵政大臣之印 が朱く押されています。

人生の中で一番がんばった、こんな思い出があるので、あの切手が欲しくなったというわけです。

 

じゃ、切手の絵柄のもう1つ、ホーンスピーカーはというと、

最近私はこういうホーンスピーカーに凝っていて、これでCD を聴いています。


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切手の絵と、下部の形が違いますが、同じようなホーン型のスビーカーを鳴らしてCD を聴いているのです。

この写真のは、1920年アメリカ製です。今から95年くらい前のものですが、まだ生きています。当時の物はほとんど故障しています。修埋して、聞けるようにしました。

ホーン開口部は直径29cm。マグナヴォックスというメーカーのM4という型です。振動板は雲母の薄い円盤です。蓄音機も古いのはサウンドボックスが雲母です。

他には直径36cmのホーンもあり、メーカーもRola とか、TELEFUNKEN のをとっかえひっかえ聴いています。

マグネチックスピーカーの元になったもので、電磁石と永久磁石とコイルの組合わせで、振動させます。

機構的に厄介で、現代のスピーカーより複雑です。

音は Hi Fi の反対です。低音も高音も出ません。なのになんでこれが好きなのか。初めてこれを聴いたとき、音悪いのに、なんだこの魅力はと考えていました。

数日聴いて、ふと、思いあたりました。これ、ホーンの音の味なんだな。畜音機と同じだよ。蓄音機だってホーンだ。

普通の価値観では、良い音とは言えませんが、歌手の実在感があります。

私は以前にも書きましたが、女性ボーカルしか聴きません。ですから、低音、高音が出なくても、ま、OKなんですね。なにしろ、およそ100年前のスピーカーが鳴っているのですから文句言えません。

これで戦前戦後(1940年~1950年代)のモノラル音源の復刻CD を主に聴きます。SPレコードを鉄針で擦る蓄音機よりは滑らかな音が出ます。

ジャズでは、リーワイリー、ジョニージェイムス。他にもたくさん、当ブログ初期の『板の上の単球アンプ』に登場した 

JAZZ喫茶 Jazz in Teagarden のマスターに教えてもらいました。

 

蓄音機を聴き始めた頃から好みになったシャンソンでは、リュシエンヌドリール。イヴェットジロー、などなど。『ミラボー橋』なんか、パリ、セーヌ川の西日傾く橋の上の情景が、この古びたスピーカーから滲んできます。

ソプラノはマリアカラス。数年前は清楚なソプラノが好きでしたが、最近は清楚というより、ゴージャスな彼女をよく聴きます。オペラホールの空間の感じが、ラッパの奥から漂ってきます。

 

長くなりましたので、ホーンスピーカーについてはまたいつか。

前回今回は一枚の切手の絵からでした。

 

電鍵とホーンスピーカー


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これは アマチュア無線50年 の記念切手です。私には切手収集の趣味はありませんが、あるオークションでたまたま見て、入手しました。シートではなく、ただ1枚。送料も含めて200円もかからず入手です。

絵柄が気に入ったので、記念にと衝動買いです。壁に何かを掲げる趣味もありませんが、これは、小さな額に入れて、飾ろうかと。

先日、6月下旬 (2020) のことです。

 

電鍵(でんけん)は切手の絵の左下の物です。キー とも称します。いわゆる トンツー 通信に使う道具です。トンツーのことは、電信とか、モールスとかCWとも言います。

 

アマチュア無線には1級から4級まであって、4級は初級で、マイクで話すだけですが、3級以上の免許をとると、電信もやれます。

昔は4級を電話級、3級を電信級と称していました。

 


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これは練習用の安い電鍵です。切手の絵の電鍵と同じく、縦振り です。実にシンプルな機能しかなく、バネの強さ(キーを押すカ)と接点の間隔の調整しかありません。しかし、十分です。

私はこれを中学2年の時に買いました。ピーピー鳴る発振器を真空管のジャンクラジオで作って、A トツー B ツートトト C ツートツートと打って練習しました。

当時の電信級の国家試験は、無線工学と電波法規、電信聞き取りと、打電の実技がありました。

当時(1970年代はじめ) 出たばかりのカセットテープレコーダーのキットを買って作り、英語教科書の英文を、ピーピーと自分で録音して、それを聞き取る練習をしました。

長点ピーは、短点ピの3倍の長さ、文字間隔は短点3つ分と決まっています。

 

その年の秋、少年は東京蒲田へ電信級の試験を受けに上京した。日本電子工学院という学校が試験会場である。

工学や法規は記述式で、計算式や値、法規用語など筆記する。

さて、いよいよ電信聞き取りの試験だ。

ピーピーとスピーカーが鳴った。広い部屋に大人や少年、数十人が机にかじりつき鉛筆を走らす。ピーの音にエコーがかかって聞きづらい。それでも少年はピーピーを必死に追った。

終了。鉛筆を置いた。1分。25文字。我に帰って少年は自分の回答用紙を見た。アルファベットの羅列の中に、

APPLE ON THE TABLE  という文が読めた。

次は打電の実技試験だ。別の部屋に机が数台横並びにあって、その机に試験官が1人ずつ座っている。そして机には電鍵があり、試験官側には紙テープが巻かれているリールのついた機械がある。

中学の制服、詰め襟を着た坊主頭の少年は、極度に緊張して、一人の試験官の前に対座した。

打電開始の前に部屋の前方に立っている先生が説明を始めた。

机上にある英文を打つ前に、BとT をつなげて打って下さい。

え?! なんのこと? そんなの知らねえど。

少年はアルファベット26文字と、数字と少しの記号を覚えるだけで精一杯だったのだ。文頭の開始の符号 ツートトトツー を知らなかった。緊張に焦りも加わったが、とにかく言われたように始めて、なんとか一文障を打ち終えた。

少年が電鍵を打つと同時に試験官の手許には白いテープが流れてゆき少年のトンツーが機械のペンによって棒線で記されていたのである。

君の符号はよろしい。長点と短点が、正しく3対1になってる。と黒い背広を着た、痩せた初老の試験官が言った。その記されたテープを少年に見せてくれた。少年は電信の大ベテランの先生から誉められたと、嬉しく、ホッとした。

 

さて、少年の試験決果はどうなったのでしょう。

長くなったので、つづきは次回。

ホーンスピーカーのことも合わせてご紹介

DSPラジオ 小型 FM

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これはFMだけが入るDSPラジオです。2016年ころ作りました。
一辺が 5 cmくらいの小型です。極小スピーカー内蔵です。10円玉よりちょっと幅のある楕円スピーカーで、BGMとして、聞くには使えます。

今から二昔前、アマチュア無線機のハンディートランシーバーで、ヤエスの VX-5 というのがありました。それがFMラジオも受信できて、手のひらに乗るくらいの小型ながら、結構いい音してました。私は、小型でも捨てたもんじゃないなと思っていたのです。

さて、この DSPラジオの、基板だけは 
アイテンドーのキット AKIT-1079BK というのを使いました。
円形のプリント基板で、ICとコンデンサー、抵抗、5つのタクトスイッチのセットです。
今でもあるようですが、今のはCRがチップ型になっています。当時のこれはリード線のCRです。
アイテンドーのHPに回路図などあります。
タクトスイッチで操作します。
選局+- 音量+- 電源。

ところが、私は写真のように、ケースに納めるため工夫をしたら、失敗してしまいました。
タクトスイッチが小さくて、頭がケースの厚み以下でしたので、別あつらえのボタンをスイッチの頭に接着剤でのせました。
そして悲劇!
接着剤が多すぎたのか、スイッチを2つダメにしてしまいました。

写真のように、スイッチボタンは3つしかありません。
黄白は音量の+- 、青が選局の「-」のみ。左に見える黒いスライドスイッチは主電源と、出力のイヤホンかスピーカーかの切替えです。

選局が大変で、主電源を入れると、常に一番高い周波数からスタートします。タクトスイッチ1つをコチコチ押して、自動選局の周波数を下げていきます。
目当ての局を通りすぎてしまったら、電源OFF、再度ONにして、一番高い周波数からまた1局ずつ下げていきます。
めどくせ-ですぜ~!
以前、超再生FMの記事で、「世界一めんどくせ-ラジオ」と自ら笑いましたが、
これは「世界二番のめんどくせ-」です。
関東地方で、ワイドFM のニッポン放送から、一番下のベイFMまで移動しようとしたら、一体、いくつの局を通り越せばいいのでしょう? 数えるだけで気が遠くなります。

もし、本体基板の電源スイッチが故障せずに生きていて、それを使うなら、電源OFFにした時の設定が記憶されているので、さほど面倒なことはなかったのですがね。
(その代り常に徴小電流を消費しています)


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底の盖を開けたところです。
単4電池です。


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黒いスピーカーが見えます。
右上角にはブロックコンデンサーが1個、独立してます。元は基板に付ける物ですが、背が高いので外へ出しました。他のブロックコンデンサーは基板の上で寝かせています。
ケースは タカチ のを使っています。小さく、立体的に、まとめるのは結構大変でした。
タクトスイッチを上から押しても大丈夫なように、基板を固定するのも大変です。ビス穴のスペースもなく、1本だけ透明なポリネジを使ってます。あとは接着剤でなんとか。



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右側面の穴はイヤホンです。イヤホンジャックは基板に付属です。
元々、このキットはイヤホン専用です。なのでスピーカーは外付けスイッチで回路を切り替えます。8オームのスピーカーで問題ないようです。
イヤホンを挿しておくなら、そのコードがアンテナになります。
スピーカーのみ使用の場合は、アンテナとして30cmくらいのアルミ線を、赤い小さなプラグに付けます。サトーパーツの極小ターミナルです。とても良いのに、これ今は売ってないかも知れません。

世界二番めにめんどくせ-ラジオ、修理は困難なので、作り直すしかありません。実はそのために去年同じキットを買ってあります。
しかし、CR がチップ部品なのです。私は、チップのハンダ付けはやったことがなくて、「そっちの方がめんどくせ-」と思ってます。

超再生FM 完成

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ついに 超再生FMラジオ が完成しました。
今回はバラックではなく、ちゃんとしてしまった物の晴れ舞台です。
私は数年に1度くらい、まともな物を作ります。
この写真を見て下さい。カッケーでしょ?
ゴツゴツしくてハードビューティーでしょ?
世界一めんどくせえラジオは「こんなの世界に1つしかねえ」ラジオにもなりました。

で、音はどーなのよ。って、YouTubeに動画UPしました。URLをこの記事の最後に載せるので行ってみて下さい。
超再生検波でも、けっこういけますよ。

今回の思いつきは、コイルを見えるようにデザインするということが始まりです。私はコイルフェチなのでコイルを内部に閉じ込めてしまうのが嫌なんですね。

コイルを表に出すデザインを描くのは難しくないのですが、実現するとなると、電気的にはバカヤローです。
それにコイルをカバーする物をどうするか。例えばアクリル曲げて作る?なんかガラスの瓶探す?ある? と、二の足を踏んでいました。

しかし、コイルをカバーする透明なドームを見つけたので、ついに作り始めました。
100均にありました。うってつけ、もってこい、おあつらえむきの、ちょうどピッタリなのが。何かを飾るための透明なドームです。黒い台座が付いてました。
そんなこんなで、製作、苦節1か月以上です。
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コイルドームのアップです。
チューニングダイヤルの目盛りです。PCを使って普通紙に印刷しました。そのままではパッとしないのでラッカースプレーで4度塗りしています。
目盛りは実際の受信周波数と合ってますが、調整次第で変動するので絶対ではありません。
放送局の名前をアルファベット2文字で書いてます。略し方に統一性はありません。私が見て直感で分かりやすいように決めました。
86MHz辺りにTKとありますが、東京FM の第2送信所の電波です。送信塔は東京西部の山にあるらしい。

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内部はこんなんです。
天井のコイルの脚とバリコンの距離を可能な限り (デザインを優先しつつ) 短くするために苦労してます。写真ではわかりませんが、ポリバリコンは、前面パネルから浮かせてあって、コイルの脚の下に位置してます。
そのために、2.6mm径のネジのついたスペーサーや、ベークライトのスペーサー使ってます。
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いつもは図面なんか書かず、バラック作りですが、今回はネジの穴位置まで計算して、事前に詳しく見通しておきました。アドリブでは無理ですから。
自分がわかれば良いという図面です。

さて、次が刮目(かつもく)すべき内容ですぞ。
パネルは生基板です。ところが、これがクセモノでした。
高周波を扱う時は、部品の脚を最短でアースに落とすのが、憲法です。そのための銅板です。
私は当然のこととして、基板にアースしました。そうすることで、動作が安定するはずでした。
ところが、組み上がって、スイッチONすると、
ラジオは鳴りましたがしかし、ツマミなど、ボディーエフェクトが結構あるぞ。ツマミを調整して手を離すと狂ってるのです。
おかしいなあ~ ボディーエフェクトを避けるためにバリコンの軸に気を使い、銅板パネルを衝立にしてるのになあ。これならバラックの方が良かったじゃん。
で、1日悩んで閃きました。もしかしてアース? バラックは母線アースだったぞ。
試しにやってみっか、とて、あたらうるはしくアースしたるをすべてはがし、ひとすじの銅線につなぎ直したりけり。
そしてその銅線は基板とは絶縁され、浮いています。
すると、あら不思議、ボディーエフェクトはほとんど消えました。
VRの軸や銅パネルが人体との間に電気的に容量を持ってしまっていたので、エフェクトが発生していたのですね。
超再生の、この場合、筐体アースはしてはいけなかったのです。

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今回の回路図です。
ミソはFM 用二連バリコンを直列にし、さらに15PFを直列したところです。こんなの見たことないですが、ここまで容量を減らさないと、コイルにかかわるラインが長いので、同調が取れないのです。
これでもバリコン180度内に東京近郊で入る局が全部入ってます。
15 PFを10PFにすると、さすがに容量の変化量が少な過ぎ、ワイドFM辺りの高いところでは、混信しやすくなりました。

バラックのとき、ドレイン側(電源側)のVRは50K並列でした。今回VR は20Kで、それでいけたのですが、ギリギリだったので、下に固定R10kをつけました。
VRの回わし残りのRが、電源側への回り込みを阻止しているというオマケがあるかも知れません。

低周波側の10KVR の手前の、C はバラックの時より、小さくして、0.0033uFにしました。高音を減らさないためです。
音声ICの周りは最小限のパーツです。IC はスポンジ的な厚い両面テープで基板に留めています。
IC の熱は出ないし、スピーカーと一体作りにありがちな、機械的振動を拾わないように、こうしました。
あと、アンテナ線とアース(アンテナの片方)は、今回は2PFを通します。ボディーエフェクトのためです。 

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筐体底にある電池ホルダーです。
ちゃんとしたものを作ってホルダーもボディーの中に入れてしまうと、電池交換が面倒で、結局、そのラジオは使わなくなります。で、外に付けました。
これでも電池は おこっちたりしません。

バスレフ音響効果のための、ダクトが下向きに付けてあります。エンビパイプ VP-20です。内径20mm、長さ15mmです。(内部写真の方に写っているのはダクト長を調整前のもので、30mm長)
筐体の容積は2リットルあって、この15mm長ダクトで、私のヒミツの計算式では、126Hz辺りで共振してるはずです。 
スピーカーが小さく、怪しいSONY物で (ジャンク150円で購入)、あまり期待できるものではありませんが、ダクトはまあ、いくらか低音増強になっております。

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アンテナは真鍮パイプです。銅線より固い方が、形を保って美しいです。80cm長を工作。接続リード線10cm分を引いた寸法です。
まん中は径20mmくらいのコイル状です。センターローディングエレメントのダイポールアンテナの形になります。水平でもV型でも、電波状況や、机上の広さに応じて自在。

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一応、垂直アンテナです。ハ二ワの腕のようですね。
コイルの後ろはドームを守るために、背板を伸ばしたのです。ラジオを移動する時の つかみどころ でもあります。

スピーカー前の布は100均で。何かの芯にするための物らしいです。(冒頭の写真の方が分かりやすい)
サランネットの代りになる生地を探すとなかなか無いものです。本物のサランネットなんて、数千円もしますからね。

あと、パネルと天井板、背板の色にも悩みました。コイルのホルマル線(太さ2mm)の色が赤茶なので、
ニス系じゃ、コイルが目立たない。
市販のペンキの色は数少いものなんですねえ。
黒、赤、クリーム、青、グレーくらいです。で、結局グレーにしました。

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アンテナを畳んだ形です。アンテナ自体は25cmくらい。
「キヲツケ」をしたラジオロボットのようです。
このあと、ロボットは「レイ」をするでしょうか。
それではみなさんさよ-なら。


下のURLをタップするとYouTubeに飛びます。

松任谷由実「守ってあげたい」

  https://youtu.be/C5zK14COtHw


チェロ協奏曲 詳細不明

  https://youtu.be/4aUekUHKa9o

超再生FM つづき

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去年の暮れに、時節柄ということで、かまぼこ板の 記事を載せました。で、今日は、前々回の 超再生FMの続きを少し載せます。

この写真は、前々回UPした軍艦のようなバラック超再生の クエンチング発振 のオシロスコープ波形です。

超再生のミソあるいはキモということになりますが、こういう、断続的な発振のし方が高感度の仕掛けです。
発振すると、Qが高まるのをそのピークの寸前で落とし、また発振寸前まで持っていくことの繰り返しです。

この波形から読み取ると、125KHzで動いているようです。あちこちの資料と比較しても、まあ、妥当な波形であり、周波数のようです。
FET のドレイン側の回路から採りました。

こんなバラックでも、中ではちゃんと電気が動いてるんだなあ、と感心します。

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これは同調コイルを ワンターンコイルにしてみた実験です。これでFM帯が入ると思いますか?

入りました。OKでした。普通の何回か巻いているコイルと変わらず、いけました。感度も劣るという感じはしませでした。
輪の直径は8cmくらいです。太さは2mm。正しく形のことを記すと、円ではなく、オーム記号の形です。円は閉じていません。両端が回路へつながります。

実は以前から、FMラジオのアンテナコイルを、FCZなどの小さなコイルではなく、手製のデッカイやつでやってみたかったのです。これはその究極です。
コイルとしてインダクタンスが普通のコイルと同じならば、形はどうあれ、とにかく機能はするという道理です。
ちなみにこれ、〇型でなくても0型でも☆型でもいけます。
昔から送信機や、アンテナに、ワンターンコイルは活用されていました。

コイルフェチの私としては
「クルクルしてなきゃコイルじゃねえ」とか、
「これじゃあ、ただのワッパじゃねえの」とかチクリと思いますが、
見ようによっては、これでも美しいですね。周りが
バラックじゃなけりゃ。

ちなみに、アンテナコイルは使っていません。アンテナコイル付きも試しましたが、かんばしくありませんでした。

直接このコイルの端(2.4Kオームがついている方)にアンテナ線をつけています。写真の中の、赤いミノムシクリップで、1 mのビニール線。
又、普通はアンテナ線との間に2pFくらいをはさみますが、それもない方が良いみたいです。
ちなみに、アンテナ線は付けなくも、強い局は入ります。
このワッパが、同調以外にアンテナとしても働いているようです。

なんでもやってみないとわからないものですね。

聖地 バラックなラジオの

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ちかごろ「聖地」ばやりですが、
私は 小田原城バラックラジオの聖地 として提唱したいと思います。
と言うのも、
バラック的ラジオの始まりは かまぼこ板ラジオ にあり、
小田原はかまぼこのメッカであり、小田原城はメッカにそびえ、その内部に
かまぼこ板 の神々を 祭り奉ってあるからです。
その写真です。
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年末が近づいて、早くもスーパーでは、かまぼこや伊達巻きのコーナーを作って並べています。
そこで今回は、かまぼこ板に対する私の信仰の一端をご覧にいれます。

2018年9月のことです。このブログの始めの方で、1200MHzのアンテナ作りをあげて、伊豆のスカイラインから交信したと、書きました。
実はその伊豆から、小田原へ行きました。
観るものと言えば、小田原城です。城内のー画にかまぼこコーナーがありました。
それを拝観して、私は市内を歩きました。
市内には、かまぼこ通り という道もありました。
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前方左に道標の看板があります。

そして、ある老舗のかまぼこ屋さんに行きました。山上という老舗です。
上記、神々の写真の右上角に山上様が掲げられてあります。

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小田原のもう1つと言えば 小田原提灯 です。
駅内に おさるのかごやの顔出し がありました。
新鮮な魚も旨かったです。

これは今、手近かにあった私のコレクションです。f:id:aug417:20191227102945j:plain
正月には、スーパーにはよく、「まるう」や「鈴広」が並びます。
ちかごろのかまぼこはビニールのパッケージが色や図柄で全体が覆われていて、板の良し悪しが見られないのが残念です。
以前は板が見えて、柾目(まさめ)の板を選ぶことができたのですが。

私が少年のころ、家のまわりには、板の切れっぱしなど、もちろん転がっていました。ただ、それら木端は汚れていたり、ガサガサだったりして、それをバラックラジオの台座にしようとは思えませんでした。
かまぼこ板は大きさも形も手ざわりも柔らかさも、台座にちょうど良かったのです。
正月のあとは、かまぼこ板を洗って陰干しして、
これでスパイダーコイルのゲルマラジオを作ろうか、
1石レフレックスを作ろうかと、夢を見ていました。

かまぼこ板で何か作るとき、いつも私は悩みます。
焼印のある方はオモテだから、ここに木ネジなんか挿したら無作法だろうなあ、と。
でも、ラジオのパーツと一緒に焼印の文字や柄を眺めていたいんだよなあ、と。
オモテを裏側にして伏せてしまったら、見かけはただの小綺麗な板だもんなあ、と。

さて、余談ですが
箱根には、鈴広の、かまぼこセンターみたいな観光施設があって、かまぼこ作りの体験ができ、はす向かいのレストランでは、箱根の地ビールで、色々なかまぼこツマミが食べられます。

新潟には 大板かまぼこ なるかまぼこがあって、板が大きいのです。1.5倍くらいはありました。
十数年前に見に行きました。海辺の町の路地裏に、その店はありました。

超再生FM ワイド対応

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「超再生」の文字を見ると、まるで恋文を見るようにトキメイテしまいます。好きなんですねえ。トランジスタ(FET) 1石でFM を聞いてしまうというのがなんともアクロバット的で、ウルトラC(死語)で、やめられないのです。
これは今現在(2019 12月)進行中の作品です。
 今回はFMの単バンドですが、ワイドFMの受信が出来るようにしました。前回の2バンド超再生を作った時はまだワイドFMがなかった時代でした。関東で私が受信可能なのは 93.0MHzのニッポン放送が一番上で、これが入るようにしました。下は78MHzのベイFMです。

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バラックの1級品的 その場しのぎ作り です。
始めはクリスタルイヤホンで聞いたので、5cm X 12cmのカマボコ板1枚で十分だったのです。そのあとAFアンプICを付け、そうすると、発振に悩まされ、その発振を監視するために電源に電流計を入れて、と、こうなりました。軍艦の大砲のように船体から外へはみ出してます。
ちなみにカマボコ板は、小田原 籠清(かごせい)の 由緒正しい板です。
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何度も使いまわして、穴だらけですが、カマボコ板様は「余は本望であるぞ」と呟いておられます。

正面の生基板パネルも以前何かに使った物で、小さすぎですが、FM 用ポリバリコンを付ける穴が開けてあったので使いました。
ボリュームを付けるスペースがねえじゃねえの
と一瞬ためらいましたが、
必殺 L金具伸ばして横出し技 が決まりました。
この時、生基板のちょうどいい所にビス用の穴も開いていました。ラッキー! 
バラック工作好きな人なら 共感 あるある でしょう。こういう時って妙に嬉しいですよね。

f:id:aug417:20191215093103j:plain電流計は、なんと1969年の物で(文字盤に小さく記されています)、100u(マイクロ)Aです。
50年前当時は高感度メーターは高価でしたが、少年だった私は、自作送信機の電波確認のために無理して買ったのでした。その後これだけは手離せず持っていて、今回これが生き帰ったので、満足しています。

今回、本当は100mAの電流計が必要なのですが、それが手元に無くて、分流器を考えて作り、100ミリを100マイクロ文字盤で直読しています。電流計の内部抵抗が900オームです。問題なく、理論通り正しく動作しています。
普通、ラジオや受信機のメーターは Sメーター(信号強度)でしょうよ。電源の電流監視ってなあー と苦笑しながら、役立ってるので、メーターマニアとしてはご満悦なのです。

超再生は、元々自身が発振しているのですから、増幅率の高い音声アンプを付けるとすぐ不要な発振を起こします。
ボボボボ とか ブーとか、モーターボーチング と呼ばれた耳に聞こえるのもありますし、耳には聞こえない高い周波数の回りこんだ発振もあります。その時、電源電流が異常に増えます。
このIC は電圧増幅率が40dBもあって、クリスタルイヤホンが鳴る程度の音声を、16cmスピーカーが十分鳴るほどに増幅します。なので、発振もします。
しかも遮蔽を施さないバラックは奇生発振を好みます。

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コイル病 の私は手巻き自立コイルを眺めていたいので、敢えてコイルはむき出しです。少しはボディーエフェクトがあります。
コイル径30mmです。
アンテナコイルと、同調コイルの間隔は大事です。あまり接近すると、発振しません。

回路図です。初稿から変更しました。
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赤字は変更した所です。
図左下の20KVRから右への回路に1uFのC をはさみました。実験段階で、このCがなくても可だったので、部品が少ない方が良いとて、入れていませんでした。
以前の記事、2バンド超再生 にはこの Cを入れてありましたが。このCがあった方が安定します。

図下方の音声用10Kボリュームの左の0.0047uは発振止めです。0.001くらいから発振止めとして使えます。ローパスフィルターの形になっていますので、あまり値を増すと、高音に影響します。R が4.7Kの組合わせで、PCのシミュレーションでは、10KHzくらいが3dB落ちポイントです。

同所の、元10Kだった固定抵抗は4.7Kにしました。シミュレーションではこれが10Kだと、音圧が6dB下ってしまうとわかったので。4.7Kで3dB落ちです。耳で聞く音量は大して差がないのですが、心持ちのためです。

このC、0.0047はもし発振したらの話です。

クリスタルイヤホンで聞くだけなら、このCとAFアンプは不要です。4.7Kの固定抵抗の後にイヤホンを付けます。
まずはクリスタルイヤホンで聞くのがおすすめです。
「おっ、聞こえる!」という、ゲルマラジオのような感動があります。
クリスタルイヤホンの音量はゲルマラジオより少し大きいです。

受信に成功すれば、音声も音楽も了解度良く、聞き取れます。ただし、わずかなノイズや歪みはあります。超再生の検波ですから。

普通の超再生は、受信調整のためのボリュームは1個です。
この超再生も、ワイドFMが不要なら、図の左下の20K(B)のボリュームは、10~15Kくらいの固定抵抗に替えられます。
今回は広範囲の周波数をカバーするために、ここもVRにしました。受信周波数の高低で、2つのVR を調整します。
『世界一めんどくせえラジオ』です。

VR は良い物を使うべきです。
私は、始め、古い物を使ってましたが、発振はするはガリオームガリガリだしで、結局、2個とも手持ちの新品にしました。
ところが50Kの2連しかなく、並列にして使ってます。
写真左のVRアメリカ製の物らしく、軸の径が 6.1mmあって、日本のツマミが入らず、エレキアンプの何かに使うのでしょう、鳥の嘴のように尖った変なツマミ(チキンヘッドというそうで)しかはまりませんでした。この形、微調整しずらいです。切替えSW用なのでしょう。

バリコンはFM 用の2連の片方。25p前後。ツマミ180度いっぱいに受信できるように、20pの固定コンデンサーを直列にしています。
ポリバリコンの背中の小さいトリマーコンデンサーは重用です。受信周波数範囲の調整は、まずこれを回わします。それでだめならコイルを調整します。横に広げると受信周波数は高く、縮めると低くなります。
軸はツマミを付けるために、ベークのスペーサーで延長しています。金属だと、ツマミを触った時のエフェクトがけっこうあります。

アンテナは1mくらいのビニール線です。
状況によっては、同じく1mのビニール線をもう1本使い、これを本体アースに付けてアンテナ線とは反対側に伸ばします。ダイポールアンテナの形になり、感度が良くなります。水平か垂直か、あるいは開いたVの字にします。
コンセントにアース端子があれば、本体をアースすればボディーエフェクトが減ります。
ただし、これらは状況によって、変わり、アースがない方が良いこともあります。

私は上記のVの字ダイポールの先端がミノムシクリップなので、スチール製のカーテンレールに付けました。クリップ間の幅は1.5mくらい。
アンテナ線が逆三角形を描いた形になります。窓はFMの放送塔の方を向いてます。
これはデルタループと言って、結構良いです。カーテンレールは木部にネジ留めされてますが。使えました。
三角形の周長が3.5mで、85MHzの1波長分です。

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これは今回の、回路修整時の写真ですソース側のVRが今までは右側のL ラグに無理矢理ハンダ付けされて、ツマミが斜めだったものを、今回、L金具伸ばして横出し技 を再び使って、パネル右に整えました。
操作しやすくなりました。
冒頭の写真と比べれば、わかります。

私の作ったこれの電源電流は、
小さめな音量で10mA
中くらいの音量で20mA
大きめの音量で30mA です。
50mAを超えると、異常発振と考えられます。

電流の消費はほとんどAF(音声)アンプ ICです。
受信部の 2SK192A は どのような発振状態でも 0.35mA しか食いません。

バラックはお気楽です。気のままやっつけていきます。
超再生は飽きません。いじり出すと何週間も遊べます。
このブログもまだまだ超再生ネタを出しそうです。