この、夏休みの工作 みたいなの、AM(中波)トランスミッター(送信機) です。これでAMラジオへCDやレコードの音楽を電波として、飛ばせます。
昔の5球スーパーや並三ラジオで、ジャズやシャンソンやオペラを聴きたくないですか? せっかくヴィンテージラジオを持っているのに、今のAM放送は、おしゃべりとバカ笑いだけですもんね。
昔のラジオには、ピックアップ端子がついていて、ラジオの低周波増幅部ををアンプとして使うことはできます。プレーヤーをつなげば、音楽は出るでしょう。しかし、それは 愛すべきラジオ の音とは言えません。
チューナー部やIFTを通過したラジオの音は、独特な味のあるものです。真空管ラジオから戦前のスイングなんか流れてきたら、どうです? 自作の2石レフレツクスラジオからシャンソンが流れてきたら?
このAMトランスミッター 送信周波数1000KHz の固定です。地域によっては、近い周波数にラジオ局があって、混信で使えないかもしれません。
関東ではTBSラジオが954KHzで、周波数が近いですが、私の所(TBSから25km)では混信はないです。このブログに登場した ミュー同調ラジオ は、選択度があまり良くはないですが、TBSにかぶらず、トランスミッターの音を聴けてます。
AMトランスミッターに関しては3~4回に分けての記事になりそうです。
今回は、基本的な回路で、部品も極力少くしたものです。
「AMトランスミッター1号」とします。
次回以降はグレードUPしたトランスミッターの記事です。今年、2022年夏から秋にかけて、これの研究をつづけてきました。
このブログではあとから訂正や加筆がよくあります。そのつもりで見てください。
トランスミッター初回なので長くなりますが、ご覧ください。
これがキモです。トランスミッター を作るには、発振部を作らねばなりません。しかし、今回、それをパスします。
クリスタルオシレーターのモジュール というシロモノ。秋月電子で200円。
「YIC J1 1.0000MHz OSC -5/H」これを使います。中身不明。でも、面倒な発振回路の自作、これでパスざんす。
低周波増幅回路も作りません。サンスイのトランス ST-28 のみ。再生がCDプレーヤーだと、100mv~400mVありそうで、オーディオのプリアンプの出力もそれなりにあるし、スマホなどのイヤホン出力もかなり高いので、今回はトランスのみでOKです。変調かかります。
クリスタルオシレーターがカッコイイので、見えるように立てました。
実はこれが、私のトランスミッターの本当のキモです。キモ中のキモです。
何がよ、ただのバーアンテナコイルじゃんけ。と、お思いのあなた、それがちがうんです。バーアンテナコイルはラジオの受信アンテナですが、送信には使えない、というのが、定説でした。私もそう思ってました。トランスミッターでバーアンテナコイルを送信アンテナに使ったのを見たことがありません。
今回、超簡単トランスミッターを初めて作ったとき、アンテナは定番の、数十センチのビニール線。飛んだ距離、かろうじて20cm。それでも、やれうれし。変調かかってるぜ ! しっかしなあ、20cmじゃなあ。
で、思ったのがフェライトバーアンテナコイル。「アンテナの可逆性」という法則もあるしなあ。だめ元でやってみっかとて、男、いさんで作りにけり。
じゃ~ん ! 飛んだ ! 1m ! 男、うそー? マジかと思いにけり。
で、さらにそのキモは普通の、コイルとコンデンサ並列共振ではなく、直列共振。これも今回やってみて初めて直列でもOKなんだと感心しました。又、並列にすると、今回は発振モジュールを直流的に壊すだろうと思われたからです。
いろいろ調整して、ついに飛距離、6mに達しました ! 6mですぜ、お客さん。内緒の話、これ以上飛ばすとおまわりが飛んできますぜ。
ただ今回の超簡単トランスミッターは、ノイズなしで2mです。でも2mあれば十分だと思います。
又、そのバーアンテナコイルはなるべく高くして、テーブルなどから浮かさないといけません。ここから電波が出るのですから。支えをどうするか? ま、作れるだろうが面倒。そこで閃いたのがペットボトル。さすが バラック の作者、天才じやね? いやどうも、それほどでも。
キャップにキリで穴をあけて、板に木ネジ留め。
回路図、どうです? この単純さ。1石ラジオより簡単です。
*注 後記* 決定版では、バーアンテナコイルの巻数は60回くらいに変更します。
電源は3V。あとで説明しますが、これもキモです。私は単三2本使ってます。消費電流はなんと、0.57mAしかなく、1mAもないんです。電圧が低く、CMOS素子を使ってるからでしょう。電池はそうとう長持ちするはずです。
実は先日、本機を新品電池で使い始め、数時間楽しみ、スイッチを切り忘れてしまいました。24時間後、翌日それに気がつきました。その電池を測ると新品のときより、0.1V下ってました。1日1時間使ったとして、20日くらいは、あるいは1ヶ月くらいは保つと思われます。
バリコン。私は初め、270pFのポリバリコンでしたが、チューニングが、結構クリチカルなので、容量の少ない、FMラジオ用の2連、並列で40~50pF を使いました。
この時、コイルは120回巻きでした。今はペットボトルに収めるため、95回巻きにし、FM用2連並列バリコンに、47pFの、固定コンデンサーを並列にしています。コイルをほどきすぎちゃったのですね。
フェライトバーは長さ10cmです。これより長ければ飛距離もその分、伸びます。コイル巻数も減ります。でも、土台の板が10cmなので美を重んずる私は板に合わせたのです。
リッツ線は、径0.3mmくらいありそうです。太いです。オヤイデ で10m 600円。
土台と言えばカマボコ板です。これは自作道の昔からのキマリです。今回は少し小さい板を使いました。名産地、小田原の逸品です。
変調トランスは Sansui の ST-28 です。インピーダンス 20K:4K 900円以上して、今回のパーツで一番高いです。しかし、これがキモで、私はサンスイのドライバートランスを十個以上試して、これにしました。
まず、入力側にする方のインピーダンスが他のトランスより比較的高いこと。出力側は入力より数倍の巻数比があること。にもかかわらず、出力側のDCR直流抵抗はあまり高くないこと。これらの条件は相反していて、バランスを取るのが難しいのです。
でも、サンスイのトランスがあって良かった。感謝です。千石電商やマルツパーツに売ってます。
トランスの入力側のインピーダンスが100オームや1Kでは、ヘッドフォンステレオくらいしか使えません。ヘッドフォン出力はインピーダンスが低いから使えるのです。CDプレーヤーやオーディオアンプの出力インピーダンスはけっこう高く、つないでも音が小さすぎるのです。
ですから入力とする方のインピーダンスは高くなければいけません。ST-28はトランスカタログ値4Kです。
この4Kを入力とします。しかし、これでも2次側につくモジュール自体か、回路のインピーダンスが低いのか、それの比で、4Kが600オームくらいに下ってしまいます。送り出し対入力のインピーダンスはけっこう重要です。「ロー出しハイ受け」 が直面した問題です。
今回の多くの実験で今まであまり気にしたかったインピーダンス問題を肌身にしみて体験しました。
巻数比は大きい方が、音声信号が大きくなって良いです。ただ、巻数比3倍だから出力も3倍になるとは言えないようです。倍率は小さいようです。又、巻数比があまり大きいと、周波数特性が良くないようです。
結局、2~4倍が良さそうです。ST-28 はカタログ値2倍です。
実はこのオシレーター、正弦波は出せません。写真のようにパルスです。私は初め、パルスで変調かかるんだろうか? 音が歪んだらトランスミッターの意味ねえよなあ、と思ってました。しかし、考え直しました。
CDだって、サンプリング同波数44KHzだよなあ。だったら1000KHzはもっとOKじゃねえの44KHzの20倍以上こまかいぜ。同じ理屈があてはまるかわからんけど。ま。やってみっぺ。で、実際にラジオから普通の音が出て来て、はじめて安心しました。いくら聴いても歪は聞き取れません。
上の写真は、当機のオシレーター出力5ピンから取ったもので、無変調で、アンテナはつないでないものです。
実は、念のために後で調べたら、1MHzのパルスは、コイルを通過した所では、上の写真の通り。正弦波に近い波形に変化しています。アンテナコイルがフィルターの役もはたしていたのでした。パルスのカクカクを滑らかにしていたのでした。コイルはパルスを正弦波に近づける定番フィルターだったのです。バリコンの上下両端にオシ口の棒をあてて取った波形です。オシ口棒のホット側には3pFを挟んでいます。
バーアンテナコイルにピックアップコイルを数回巻いて、オシ口にピックアップすると、オシレーターの出力の5ピン近くでは、カクカクが波の斜面にツノのように出ていました。コイルの中間ではまだ未完成ながら正弦波に近い波形が見られました。
オシレーターの電源入力は8ピンです。ここにいわゆるパスコンという役目のコンデンサ 0.047uF を入れてあります。データシートでは0.1uFです。オシ口の変調波形を見ると、このコンデンサーかないと、波形にノイズっぽい小さなツノか出ました。聞いた感じではわかりませんが。
しかし、この8ピンは音声信号の通り道なので、0.1uF だと、高音、10KHzあたりからレベルが下ってしまいます。わずかですが、耳でわかります。で、0.01uF だと高音レベルはOKですが、波形にまだツノが見えました。で、0.047uF にしたのです。これだと、波形OK。聴いても高音のレベル下がりはほぼないです。
回路図はオシレーターを上から見ての図です。金属ボディー四角の角の3つには丸みがあり、
1ピンのそばの角のみ、丸くなく直角です。ケースの天に、1ピンを表す丸印が小さく刻まれてます。
オシレーターはDIPという形式のICで、ソケットもこれの丸ピン用のが使えますが、私は今回使わず、じかにハンダ付けです。本当はソケットをつけるべきです。素子の故障などのときのために。
1ピンはNCでどこにも接続しません。ノーコネクションです。私は素子本体を支えるために端子にハンダ付けしています。
4ピンはGND、アースです。素子の金属カバーはこの4ピンとつながっていて、他のピンや剥き出しのリード線がカバーに触れるとアースに入っちゃいます。私はヒヤッとしたことがあります。
音声入力の赤白ピンのジャックは2連の板を、ノコギリで半分に切りました。この形にすると2本のタッピングビスでカマボコ板に留められます。
入力回路はLRを単純にショートしてます。普通は1Kオームの抵抗をそれぞれ、LRに入れてからショートします。しかし、そうすると抵抗を通過した分、音圧が下がってしまいます。本機はギリギリ設定なので単純ショートです。これでも音に影響はないようです。
出力のバリコンのチューニングは大事です。ずれると、音が歪みます。ラジオを聞けば簡単にわかります。
詳細は次回の記事に書きます。
私は、よくあるポリバリコンツマミの黒いのの、53 9 16 などの文字を黒で塗りつぶし、テープを三角に切って目印として貼り付けています。
ポリバリコンを支える板は、厚紙です。穴あけ簡単です。あとで気づきましたが、横幅がツマミより細くて正解でした。平べったく薄いツマミでも指が板に触れずに回わせます。
さてパーツのとんでもない話。今回、ブログに載せるために、小綺麗に作り直したのですが、電池ボックスも6V用から、3V用に換えました。そしていざON にしてみると、ウンともスンとも音が出ないのです。
あっれ~? ラジオの方は大丈夫だしなあ、とて、本機の電圧を測ってみると、マイナス3Vと出てる。あら、やっちゃった。プラスマイナスまちがえて配線。とて、よーく調べても、合ってる。?????? もしや、とて、電池ボックスを診ると、あっと驚くためごろ~う~(昭和の、ハナ肇氏の名言) 赤黒のリード線が元々、プラスマイナス逆に付いてる !
で、赤黒を切って逆に直してOKとなりまして、ラジオから音が流れました。オシレーター素子は壊れていませんでした。
こんなことってある~? こんなことって初めてです。A電子で買ったスイッチ付きの完成品の電池ボックスです。90円とは安いなあと思ってましたが。
ま、あるんですね~。今後はなんでもチェックしないといかんと思いました。
ちなみに、電池ボックスは小さい木ネジを、電池の当たらない内部の隅に挿して板に留めてます。
これが本機の変調波形です。1000KHzの搬送波を、入力0.2V 1KHz の正弦波で変調したものです。
変調率は約30%になります。この数字はあまり高くないようですが、ラジオを聴いて不足なく十分です。
初めて変調に成功したときは、10%いきませんでしたが、大よろこびでした。しばらくすると、なんか音の味が薄くね? 気づきました。となりのTBS放送の音と比べると、大分音も小さい。
初めは飛距離を伸ばすことばかり考えていましたが、変調の深さも必要だと気づきました。
さあ、そっから大奮闘、じゃあ、音声増幅部を作っぺ。なんだ歪が大きいな。アンプ部はもっと高圧電源必要だっぺ。しかし、発振部の電圧も上がって、また変調浅くなってら。ほんじゃ、三端子レギュレーターで電圧下げっぺ。なんのかんの大げさになってきました。
やれ電圧だ電流だ、それインピーダンスだとジャングルの中をさ迷ってました。あれやこれややってみて、結局、音声信号と発振部へ行く電圧のバランスがキモだとわかったのです。で、部屋の中なんだから、飛距離は2mで十分とし、一方で発振部の電圧をギリギリまで下げるという発想が湧いたのでした。
それが電源3Vの秘密です。トランス出力測のDCRが電圧降下分を含めてちょうど良いことが、要求されるのです。
で、変調率は20%なら、不足感はなし。30%あれば十分だとわかりました。実際のCDやレコードの音圧はフォルテッシモでは相当出ていて、変調を深くしすぎると歪んでしまいます。
余談ですが、アナログオシ口スコープだからこそ、変調波形の搬送波がきれに淡く輝いてます。これがデジタルオシ口だと、ベタッと塗りつぶされているようです。
水平のバーアンテナには8の字の指向性があり、ラジオとの向きあわせ方で受信が弱まる場合があります。
場合によって、本機の、バーアンテナとバリコンの接続点にビニール線を付けて、ラジオの近くへ持って行く手もあります。逆に、ラジオのアンテナ端子にビニールを付けて当機へ近づけるのもありです。
近ければラジオの真横に並べても大丈夫でしょう。状況によりけりです。
ジャーン。左は1947年ころのアメリカの真空管ラジオです。手前はよく実験に使ったポータブルCDプレーヤーで、イヤホン出力もライン出力もあります。
真ん中は350mLのコーラです。大きさ比べのために。
小さいけどいかにもアメリカ風でポップなラジオのデザインに合わせて、写真撮りのためわざわざコーラを買ってきました。ちなみに私はコーラは飲みません。炭酸はビールだけです。
当然、実際にはラジオとの間にカンなんか置きません。
このラジオにリーワイリーなど当時のジャズボーカルを流したら最高でした。死にますぜ。シャンソンはもちろんステキすぎて、『聴かせてよ愛の言葉を』なんて気が狂います。マリア カラス のソプラノは気どらず、すげえ身近かな存在に聴こえました。
上にのせてもよく入ります。熱に注意。
今回、トランスミッターを作ってみて、その魅力にハマリました。作る前は ラジオ放送ごっこ になるのかなあと想像していましたが、大違いでした。もっと深いものがありました。
立派で大げさなオーディオ装置なんか、もういらねえや、と思えるくらいです。
私は5球スーパーは結構持っていて、古いラッパ型ラジオも並三もあります。みな故障していて眠っていますが、直して使おうかと、意欲が湧いてきました。
何年後かに、日本ではAM放送を廃止しようという馬鹿気た動きがあるようですが、これで 尊いラジオ の命が救われます。